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恨み

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朝の通勤で原付に乗っていると急にカレーの匂いが鼻腔に充満した。不意を突かれた。5秒後には匂いは消え、再度キリッとした空気に包まれる。でも頭の中はカレーの映像で満たされている。カレールゥは安価な物、スパイスの主張は弱く子供が好きそうな甘口。恐らく豚肉。野菜の形まではわからないがゴロゴロとした大きいカットではないはずだ。もう記憶には無いが、給食で出てくるカレーに近いのだろう。出汁で薄くのばしカレーうどんで食べたい。

仕事に向かう最中に運転しながらそんな空想をする。いや、勝手に脳が映像を提供するのだ。それを心の目で見つめる。仕事前のピリリとした心の緊張が消え、デロっとしてしてしまった。

カレーの匂いに包まれた時は小さな幸福に包まれたのだが、僕は朝カレーをしている家庭を少し恨む。匂いのおすそ分けの代償として仕事をしたくなくなった。家に引き返してカレーを作りたくなった。でも個人事業主には有給が無い。引き返す選択肢は無い。

翌日の朝、昨日のカレーを思い出して出勤30分前から作り始める。食べるためではない。匂いを撒き散らせて多くの人に昨日の自分の気持ちを味あわせてやりたい。が、ジャワカレーしか在庫がなくて自分の思い描いた嫌がらせが完成しなかった
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とむこの悪口帳「別館」

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