お店を開いた直後、ある仕出し弁当屋さんが営業に来ました。開店直後なのでお金もなくて仕出し弁当を取る余裕は無かったのですが、サンプル代わりにとちょくちょく弁当を只で置いていきました。契約を取れたって二人分の弁当を届けるほうが却って面倒ではないか?なんて思いながら只弁当を頂いていましたが、数か月後には頼んでみるかとお願いすることになりました。いつも訪ねてくれるお姉さんがとても熱心かつ押しつけがましく無かったので、ほだされてしまいました。
弁当容器を夕方引き取りに来ていたのですが、外に容器を置いておく場所がなく店内で手渡しで返していました。半月ほどそのようなやり取りをしていたのですが、ある日回収に初めて見るおばさんが現れました。割烹着を着ていたので恐らく容器の回収だろうと気付いたのですが、お客さんの対応中だったので「すいません、ちょっとお待ちください」と声を掛けました。そしたら「私だってお客さんだよ!」と怒鳴りつけられました。口論しても仕方ないので対応中のお客さんを待たせ、弁当容器を返却しました。とても腹が立ちましたが、この手の人に正論を言っても時間の無駄なのでその場は収め、手が空いた直後に弁当屋に電話をして即日解約しました。電話に出たのは営業に来ていたお姉さんで、残念というより諦めに近い音色で分かりましたと返事がありました。怒りから覚めてみれば、今回のようなやり取りは初めてではないであろうこととお姉さんとおばさんは嫁と姑の関係なんじゃないか?などと推測はできました。その後はお姉さんはお店に現れなくなりましたし仕出し弁当の車も数年後には見かけなくなったので答えが合っているかは分かりません。
先日、新規のお客さんがお店に来ました。全然会話が成り立たなくて顔を合わせてから数分でうんざりしました。頑固な性格に少し痴呆が混じって程よく混沌としています。息子さんが付き添いで来てくれていて、ほとんどの会話は息子さんを通して行われました。時々会話が成り立たないお客さんには遭遇しますが一番強烈でした。何だろう胸がざわざわするなんて思いながらお客さんの顔をよく見て名前を確認したら、弁当屋の屋号に使われていた漢字一文字とお客さんの名前の一部が同じでした。弁当屋のばばぁだと確信しました。20年前に一度数分会っただけなのに、こうして記憶は繋げてくれるのか。凄い。頼むからこんなくだらないことを覚えていないで楽しい記憶を残してくれ!
20年ぶり

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