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見下す

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土曜日の昼過ぎ。中学2年生だった僕は校内の練習場で家から持ってきたパンを食べていた。一度家に帰って持ってきたのだと思う

6枚切りのややぱさついたパンの間にマーガリンを厚く塗った簡素なもので、パンの耳もそのままだった。腹を満たすためだけに作られたものだ。栄養バランスも何も考えられていない。

父親の会社では残業するとそういうパンが配られた。マーガリンの時もあればいちごジャム・ピーナツの時もあった。配られたパンを父親は食べなかったのだろう。だから僕はその残業パンを時々口にしていた。

簡素な見た目であったが、味が悪いわけでもなく中学2年のようなエネルギーを無駄に必要とする時期には丁度よいカロリー補給物だった。BTLサンドやカツサンドである必要はない。

自宅にいる時と変わらず校内でそのパンを食べていた時、後輩の子が僕を見てとても嫌な笑みを浮かべた。人を馬鹿にして見下した時の笑みだった。すぐにその原因が僕の手にしているパンだと気付いたが、僕は怒りよりも気持ち悪さを先に感じて不快な笑みに対してリアクションを取れなかった。

他人が残した食事を貪るホームレス見た時の笑み、といえば良いだろうか?

他人の不幸を見ると自分の幸せを感じる質なのだろうか?それとも他人の不幸がただ楽しいのだろうか?でもそういう時にしか出ない下品な笑みを僕に向けた。

問題は僕は全然不幸でもなかった点だ。父親の残業パンは簡素ではあったが粗末では無かった。それに簡素なパンを食べていただけで貧困な家庭でもなかった。

何故なんだろう?

もしかすると彼の父親も僕の父親と同じ会社に勤めていて、同じ残業パンを見たことがあるのかもしれない。そして何かの理由でそのパンを蔑むようになったのかもしれない。もう30年近く昔の事だが、未だにその笑いの根本が見えない。でも世の中にはちょっとした事で人を蔑んだり馬鹿にしたりする人はいる。学校というのはそういう色んな人を観察できる貴重な場所だった。大人になれば自分の意志とは関係なく集団に放り込まれて、嫌いな相手と一緒に生活するなんて事はしなくて良いのだから

 
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とむこの悪口帳「別館」

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