少し古い温泉旅館に行くと客室へ続く廊下の壁に大きな窓が付いていて、チェックインしてひと風呂浴びた頃に夕日が差し込んでいる時があります。僕はそういうノスタルジックな風景が結構好きでした。まだ照明が点いていなくて天井付近は暗いのだけど、直射日光の強い光が室内の一部を光線のように照らして陽と陰のはっきりした区切りを作っている。それは景色として成立しているなと惚れ惚れして見てしまいます。
(この旅館は全然古くないけどこういう景色を見ると胸が苦しくなります)
建築会社を決めている時に、ある工務店の社長さんと話していて、この人はかなりおしゃれな家を作る人なのだけど「意地でも廊下は作らない」と自慢げに言っていたのを時々思い出します。廊下は無駄なものという価値観を持っているようでした。仕方なく廊下が必要な時は幅を広げて一角を小さな書斎にするような工夫をしていました。
でも廊下を作らない家って区切りが無くなるので音がとても漏れやすい間取りになってしまいます。吹き抜けがあって廊下が無いと、大きな箱の中に仕切りがあるだけでまるで体育館みたいでした。家族が何時も仲良ければそういう家でも良いのでしょうが、それでも夜中に誰かの物音で目が醒めるような構造の家はあまり作りたくないなぁと思ったものです。
絶対廊下を作りたいと思っていたわけではないのですが、普通の間取りで家づくりをすれば必ず廊下は出来ます。建築中の我が家には結構長い廊下が出来ました。
とmこさんの寝室から突き当りの僕の寝室を眺めているのですが、左右に階段・クローゼット・トイレ・玄関・洗面所(風呂)と左右に配置されています。残念ながら直射日光が入る窓が作れなかったのですが、長い廊下を眺めて満足しています。こうして図面から立体に建物が変化すると、結構贅沢な間取りであることを理解します。無駄こそ贅沢なんだというのが僕の持論です。
今の建築会社の社長と間取りについて何度もやり取りをしましたが、この長い廊下について合理化しようという話は一切出て来ませんでした。もし廊下を作りたくない建築会社の社長さんと打ち合わせをしていたら結構渋い顔をされたのではなかろうかと思います。
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