マンションから戸建てに引っ越しての変化は、やはり地面の近さでしょうか?10階では感じる事の出来ない地面からの情報がいくつも感じられます。
実は10階の暮らしもかなり気に入っていて、特に外を眺めるのが好きでした。田舎なので周りに高い建物はなくて周囲が見渡せます。天気の良い日は雲の流れをぼーっと見ている事も好きでしたし、天気の悪い日は何処で雨が降っているのか確認するのも好きでした。雨が降っている場所って霞むのであの辺で雨なんだなぁというのが一目で分かるんです。夏のゲリラ豪雨はその場所だけシャワーのように雨が降り注いでいるのを観察出来る事もありました。外からの視線がないのでカーテンで窓を覆わなかったからできた日常だったのです。
2階リビングではそういう楽しみは難しいです。夏は外からの熱を防ぐためにハニカムシェードは降ろしっぱなしだし(マンションはエアコンの力に任せていました)、遠くまで見渡せないし。分かっていたこととはいえ、あの解放感を手放してしまったのは後悔の一つです。
僕が住み始めた場所の周りは古い家が多いです。真後ろの家には30畳ほどの庭があって家の横には土の通路があります。最近の家はよほど土地が広くない限り土が露出した庭を造る事は無いと思います。僕の家も基本土間コンで固めて、残りは防草シートの上に砕石を撒いてお終いです。でも周りの家は土が多いので雨が降った日なんかは雨が土に染み込んだ匂いがします。涼しい夜に窓を開けると色んな家の生活の匂いが混じります。そういう臭いはマンションでは感じません。排気ガスが混じった汚い臭いだけでした。
夜遅くリビングを真っ暗にしてブラインドを開けると、目の前に数件の民家と古いアパートが見えます。外灯も乏しく人通りも車通りも殆どないから、周りの建物も暗闇に紛れて輪郭がはっきりしません。とても寂しい光景です。アパートの廊下を照らす外灯が唯一明るいのですが、電球の色が暖色だったり寒色だったり統一されていません。そういう景色を眺めていたら、ふとマンションよりも好きかもなと思いました。というか、マンションに住む前はいつも同じような光景の中で暮らしてきたのを思い出したのです。
印象深かったのは仙台の高台にある彼女のアパートでした。仙台は中心から外れると意外と起伏の多い土地です。2階建てアパートなのに見晴らしがとても良かったです。そこから見える夜景もとても寂しくて遠くに見える家の玄関横の裸電球がぽつりと点いていて、それを飽きずに眺めました。当時はLEDが普及していなかったからそういう電球がより孤独に見えたのです。
僕は昔から派手な夜景には興味が無くて夜景とはいえない孤独な光が好きでした。マンションから見える夜景はどちらかというと煩くて好みではなかったのですが、リビングから見える暗い景色は昔から好きだった孤独を蘇らせてくれました。これから眺め続ける景色も悪くない。昼間に見える汚いあれこれが闇に隠れる夜中は今後の僕のお気に入りの景色になります
少し涼しい朝に窓を開けて出勤してお昼に帰ってきたらあしなが蜂が3匹侵入していました。網戸のない窓を開けていたので自分が悪いのですが、マンションで窓を開けていても虫が入ってくることが無かったのでやっぱり地面に近いなぁと実感しました。夜になったら更に3匹見つかりました
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