とむこの悪口帳「別館」

右後ろ ハイビーム 追従

自転車で幅員の狭い道路を走っていて、後ろから追いついた自動車が追い抜くとき、タイミングが合わずに上手く追い抜けないことがある。追い抜こうとしたら対向車が来たとか、抜き切る前に交差点で一時停止しなくてはならないとか。そういう時に明らかにイライラする車がいる。自転車側からすれば、一つもルールを破っていないのに敵意を剥き出しにされるのか全く理解できない。自動車専用道路でもないし、どちらかと言えば自動車のほうが邪魔者なのに

どんな人がイライラするのかはわかっている。要はそういう道を抜け道として使っているからスピードが出せないと苛つくのだ。

電動アシスト自転車に乗るようになってから自動車のイラつきに出くわす頻度が上がった。時速23㎞/h出るので普通の自転車よりも追い抜くのが難しいのだろう。でもさ、そんなの知らねーよ。制限速度30㎞の道路を60㎞で走ろうとするんじゃねえ!

苛ついた車が何をするか?僕が経験したのは「追い抜き時の幅寄せ」「ハイビーム」。昔は空ぶかしで威嚇も多かったけどオートマの車ばかりで最近は出くわさない


暗く狭い夜道を走っていて後ろから自動車が近づいてくる。自転車を追い抜く直前に交差点で一時停止となり抜けずに後ろに下がる。対向車がいるから交差点内で自転車を抜くことはできない。その車は交差点を超えた直後からハイビームに切り替え自転車の右後ろで20秒ほど自転車と同じ速度で走り、それからゆっくりと追い抜いていった

正直生きた心地がしなかった。自動車が少しでも悪意のある行動を取れば良くて重傷レベルの状況だ。それにハイビームは光が強すぎて周囲を白飛びさせるので道路も障害物も禄に見えなくなってしまった。

その自動車は僕を追い抜いてからさほど離れていない住宅街へ消えていった。その住宅街は袋小路のようになっているので住民以外は出入りしない。僕はその車の後を追った。半分は怒り、半分は好奇心。自動車で自転車を煽る人というのはどんな人なんだろう?


車は既に見失っていたが、気配を頼りに車を見つけ出す。ドライバーは郵便受けを確認してから玄関に向かう途中だった。


「おい!車で自転車を煽って何がしたいんだよ!!」


僕の怒りを含んだ声にドライバーの彼は怯えた表情を見せる。とても煽り運転をするような顔に見えず却って怒りが増す。

「煽っていなんかいません」
「ハイビームで自転車の後ろを追従しただろ!なんでそれが煽りじゃないんだ!」

対峙していて僕の怒りと相手の動揺の落差が大きい。本来なら僕の怒りに相手も怒りで対抗するべき状況

あれ?ちょっと変だなと相手の言い分を聞く事にする

「実は数日前に物損事故を起こしてしまって、運転が怖いんです。なのでハイビームにしたのも自転車にぶつけないようにしっかり確認してゆっくり追い抜いたんです」

彼は怯えた表情のまま説明をする。誤解を解く、というより懺悔するような口調でたどたどしく話す。あぁこれ、煽り運転じゃないわ勘違いだわ。

「紛らわしいし、ハイビームで照らされると何も見えなくなる。怖いなら細い道を走るな」
「すいません…」

捨て台詞を投げつけお互い嫌な気分のまま帰宅した






モバイルバージョンを終了