とむこの悪口帳「別館」

いけzきさんへ

師匠のお店の従業員のいけzきさんが「退職する」と挨拶に来た

「連絡しなくて何かで退職しているの知ったら嫌でしょ」

本当にそうだ。師匠の店に行って「えっ!?辞めたの」と知ったらとてもショックだったと思う。一緒に飲みに行ったり出掛けたりするような間ではなかったけれど、僕が辞めるときに入れ違いで入社した人だったので、僕が辞めてからも師匠との架け橋になっていた貴重な存在だった。電話で知らせてくれるだけでも十分嬉しかったが、わざわざ顔を見せてくれただけでその日はとても心が暖かった(自分で言うのも何だが、僕は師匠の店の従業員には慕われている。自分の店の客には全然慕われないんだけどw)

先程も書いたが僕の入れ違いに彼女は入社した。師匠は誰彼構わず雇う人だったので(だから僕も運良く雇われたのだ)「まぁ~たよく検討しないで雇って手間を増やしやがって」と彼女を見て思った。第一印象は内気で大人しそうで仲良くなるのは難しいかも知れないな、というのが第一印象だった

でも予想に反して彼女はとても優秀で僕が辞めてから大黒柱となってお店を支えた。最近、優秀な人を雇うのは投げたボールが地球を一周して自分の後頭部にぶつかる位の確率なのだと深く理解したので、師匠はとても運が良いなと思う。でも運の良さにかまけて頼りすぎて彼女は疲れ切ってしまった。そういう事はどのお店でも起こる。彼女と同じ位優秀な後輩が入社すれば負担は減ったのだろうが、奇跡はやはり起きない。そして真面目で責任感のある人ほど燃え尽きてしまう

人は失うとき、その価値に改めて気付かされることがある。いや、失ってから初めて激しい後悔を感じるというのが正しい表現だろうか?僕がそう感じる何倍も師匠も今後悔しているだろう、というか後悔しなければいけない、後悔しろ!

彼女の報告を聞いたとき、僕は「良い判断だよ」と思った。引き止めたり説得したりなんかしなかった。いけzきさんがいけzきさんらしく生きられることを僕は願う。こういう話を面と向かって話せれば良いんだけど、そういう器はないからこうして文章にしている。真面目なことを真面目な顔して話すのって本当に苦手だ

プライベートの付き合いがないから彼女の電話番号も住所も知らなかったので、挨拶に来てくれたときに必死で連絡先を聞いた。なんとか関係が途切れずに済んでホッとした。これからは仕事と関係のない、個人的な友達として彼女と付き合えれば嬉しい
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